第10章 追憶の春

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抱き締め、慰めていた彼女の身体。 今はベッドの端ぎりぎりまで遠退いていた。 「何?その露骨なまでの()け方」 龍貴は思わず、苦笑する。 そういう態度ってすっごい傷付くよなあ-自分から離れた場所に座って俯く彼女に、龍貴はわざと聞こえるような独り言を呟く。 「ほんのさっきまで大人しく抱かれてたのになあ」 「誤解を与えるような言い方しないでっ」 聞き捨てならない-泉夏は睨む。 なんでこうも彼が口にすると、全部が色めいて聞こえるのか。 それともそういう風に聞こえてしまう自分の方が、おかしいのだろうか。 でもそれも今は大した問題ではない。 「…なんか今日の龍、変じゃない?」 恐る恐る、泉夏は尋ねる。 「なんか、いつもの龍じゃないよ…?」
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