第10章 追憶の春

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「は?どこが?」 龍貴は訊き返す。 「いや、どこって…」 言い淀む泉夏に、龍貴は鼻を鳴らした。 「いつもこんなもんだろ」 「いや…まあ、いつも変といや変なんだけどさ」 「なんだ、それ。失礼な事を言うな」 おかしそうに、彼は身体を揺らした。 つられ、泉夏も微かに頬を緩める。 ひとしきり笑った(あと)。 龍貴は急に真面目な顔つきになり、泉夏を見据えた。 「いきなりベッドに押し倒されて襲われそうになったり?」 衝撃的な一言に、泉夏の鼓動は跳ね上がる。 「かと思ったら、今度はキスされそうになったり?」 流石に自分で口にするのを躊躇っていた単語を次々に並び立てられ、泉夏は狼狽える。
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