◇週末のヴィーナス◇

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気づいたのは玲奈だった。 ガゼボは間隔を開けて並んでいるが、声をかければ届かない距離ではない。 チラチラと隣を気にしていた玲奈が、「ね、隣の人、俳優さんかな? どっかで見たことある?」と耳打ちしてきたのだ。 お忍びで芸能人が来ることもあるのだろうと思ったが、サングラスをしたまま本を読んでいるその横顔は、見たことがあるどころか、嫌になるほど見飽きている整い過ぎた顔だった。 日本人離れした長身に、はおったシャツ越しにもわかる逞しい身体があり、ただそこに居るだけで匂い立つ男の色気を振りまいている。 男でもつい見惚れてしまうだろう究極の男の存在に、佐々は愕然としながらも、玲奈の気持ちが浮き足立っている様子が腹立たしい。 「玲奈、ここは日頃忙しい大人が体を休めに来るところなんだ。そんな風に隣の人をジロジロみてはいけないよ」 「わかってるわよ。芸能人かな? って思っただけよ」 ちょっと唇を突き出す玲奈はやっぱり隣が気になるようだ。
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