◇週末のヴィーナス◇

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地方で開業医をしている叔父に頼み込んで、海沿いの会員制高級リゾートホテルの1室をとってもらった。 全室オーシャンビューのスイートルームと言う、一介の勤務医には手の届かない夢の世界がここにある。 自分の部屋よりも広い部屋の、天蓋付きベッドが、ベッドフラワーで彩られている。 それを見た玲奈は「新婚旅行みたいね」と、目を潤ませた。 「今まで寂しい思いをさせてきたお詫びだよ。こんな贅沢はしょっちゅうは無理だけど、玲奈が喜んでくれて嬉しいよ」 照れくさそうな佐々の言葉に、玲奈はやさしいキスをくれた。 今日は、大切な日になる。 水着に着替えて出てきたビーチは、ホテルの建つ湾にあり、回りの海水浴場の喧噪とはかけ離れている。 白い砂浜と、青い海のグラデーションを臨むビーチ沿いに、ホテル専用のパラソルが、適度な間隔で並んでいた。 200mはあるロングビーチは広々としており、宿泊客以外の者は、海からしか湾へ入る方法がないので、実質プライベートビーチだと言っていい。
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