◇海の見えるホテルのカフェ◇

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推定年齢30歳前後。 一見スラリとした長身で、その肉体美は惚れ惚れするとは、フィットネススタッフからの情報。 月に2~3度、仕事帰りなのだろうか、夜にふらりと現れてジムで汗を流し、翌日混雑するダイニングを避け、このカフェテリアで軽い朝食をとる。 そのままチェックアウトされる時もあるし、ゆっくりされる時もある。 が、いつもお一人なので、彼もまた疲れた体をリフレッシュするために来られるのだと思う。 お車はシルバーのベンツか白いBMW。 以前は黒のベンツだったのが、今年に入って変えられたらしい。 ニュータイプのEクラスで一千万近くするとは、ドアマンからの報告。 名前は芦屋様。 カフェを仕切るマスターがそう呼んでいた。 マスターも口が堅いので何も教えてくれない。 だけど彼が来られるといつも、グァテマラをベースにしたブレンドコーヒーをお出しする。 苦味のきついコーヒーを好まれるようだ。 マスターの扱いからして特別な上客なはず。 この最近は、私に片手を上げて「おはよう」と言ってくださる。 腰が砕けそうな、その低い声はあまりにもセクシーで、それだけで身体が火照ってしまいそう。 ああ、彼はどんな女性がお好みなのだろう。
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