眠り姫の憂鬱

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 しばらくの間、部屋にあるマンガや本を読んだり、インターネットを漁ったりしていたけれど、すぐにそれにも飽きてきた。唯一続けている昼寝は、今日も連続記録を更新していて、このままだと秋学期の始業式の日も、朝ごはんの後にうっかり寝てしまう疑惑さえあった。  今になって思えば、高校にも昼寝しに行っていたようなものだったから、私のやるべきことは昼寝だったのかもしれない。そう思うと、昼寝をすることに使命感が生まれたように感じるのだから面白い。  夏休みの間の私にとって、寝るために重要な音は、ケータイのバイブと洗濯機の稼働音だった。加工アプリで、本当になんにもない日常をなんかありそうな写真に変えて投稿しておく。それを知らない人が見て、いいねをするたびに心地よい音と振動がベッドを通して伝わってくる。動作中の洗濯機が鳴らす無機質なモーター音と、それに続く跳ね返る水と放り込まれてた衣類の絡まる音は、世の中のしがらみを汚れと一緒に下水管から部屋の外に追い出してくれるようで心地よい。  外の世界のナニモノも私のための空間に入ってはいけない感じ。だから高校でもらったプリントは、ほとんど下校中に捨ててしまった。断捨離って浄める効果があるらしいから、きっと今はいろんな汚れが取れているんだろう。このままイイ女になって、一生自由に暮らしていたい。     
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