23時22分 都内某所

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それは、営業先で誘われた飲み会の帰り。 初めて降りた駅での事。 時刻は23時を回っていた。終電の一つ前の昇り電車をホームでぼーっと待っていた。 『3番線ホームに参ります電車はただいま一つ前の駅におります、お急ぎの所、誠に申し訳ありませんが今しばらくお待ち下さい』 線路を越えた向かい側、3番線のホームに少し遅れた電車がもうすぐ来るそうだ。スマホで今から帰る事を妻にメッセージを送り、ふと顔をあげた私はナニ気なく向かいのホームの3番線へと視線がいった。 すると── (なんだ? アレは?)  ホームにナニやらでっぱりの様な小さな山がある。ハッキリ確認しようと目を凝らしジッとそれを見ていると、山はズズズッとせり上がり、よくよく見ればそれは人間の頭半分がホームから盛り上がって生えているのだ。 (ヒト? いや、そんなまさか) よく見れば見るほど、それはヒトの頭にしか見えない。 目を閉じたままの人間の丁度鼻から上の部分が、ホームのアスファルトから突き出ている。 周囲を見回すがコチラのホームの者達はおろか、頭の生えたホームに立っている人すらそれに気づく様子はない。 酒が回って幻覚でも見ているのだろうか? そう思いながら、頭から目を離せずにいると…… ソイツの目がバっと開いた。 (…………っ!?) 思わず目を逸らす。 気づかれてはいけない、目が合いでもしたら── 心臓がバクバクと早鐘を打ち、背中には冷水をかけられた様な嫌な汗をかいていた。 数秒か、数分か、そんなに長い時間は経っていないが嫌に長くその瞬間が感じられた。 私は意を決して、もう一度ホームの方へと視線を移す。 顔は先ほどとは違う場所にあった。 さっきよりも僅かに後ろへと移動している、気づかれなかったんだと私は少しほっとした。
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