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付き合い始めてから一ヶ月。相変わらず大学とバイトに精を出している。いろいろ悩んだ末、結局は好きなことに変わりはないことに歩は幸せを感じていた。
毎日のように連絡を取り合い、時間の許す限り会って、他愛のないことで楽しく時間を過ごす。今までになかった愛されているということに、少しだけ不安になる。
「で、最近はどうなの?」
「どうって、何がですか? いつも通りですけど」
何とか近況を訊きだそうと美園はちょいちょい歩に寄ってきては声を掛ける。いい加減、ウンザリもしているが、コレばかりはしかたない、と諦めもある。
「で、何処まで進んでるの?」
少し頬を染めて、口を噤む。それを見てからかうのが美園の楽しみになりつつあった。
「美園、やめろ。あゆに訊く前に俺に訊け。ちゃんと話してやるから」
カウンターでジョッキを片手に少しいらだった様子の幸一は、歩を助けるように声を掛けて美園の暴走を止めようとする。
「えぇ、絶対、幸ちゃん教えてくれなさそうだもん。あゆちゃんの方が口滑りやすそうだし」
「そ、そんなことないですよ。絶対教えません」
不貞腐れた顔で美園は歩の背後に近づき、囁いた。
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