ホームの隙間

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 私は電車通勤で某線を利用している。  仕事は激務で残業は当たり前、終電で帰宅することはザラだった。くたくたになってため息を吐きつつ俯きながら電車に乗り込む。これが乗車時の定型の行動になっていた。  某日もそのようにして電車内に足を踏み入れようとしたところ、奇妙なものを見た。    “顔”だ。    停車中の電車とホームの間には多少なりとも隙間が出来る。私は俯いていたので乗り込む時は必然的に隙間を見ていたのだが……。  ホームの隙間に人間の顔があったのだ。その顔と目が合った。  私は電車内に右足をかけ、ホームに左足を置いた状態で硬直してしまった。目を瞑り、頭を振る。目を開くと――  顔はまだそこにあった。  悲鳴をあげそうになったのと、発車のアナウンスが流れるのが同時だった。  はっとして、乗車したと同時にドアが閉まった。私は即座に振り返り、窓越しに視線を下方に向けた。    顔はまだそこにあった。    後ずさるようなぎこちない動きで、八人掛けの座席の端に腰掛ける。幸い、この車両には私一人だったので、誰にも怪訝な顔を向けられることはなかった。
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