サンドイッチショップ『ラビリンス』

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 バッグの中から一枚ハガキを取り出した。結婚式の出欠返信ハガキ。尾田唯ちゃんとは、中学時代からの付き合いだ。彼氏と唯ちゃんは高校時代からの付き合いだったので、長い付き合いだった。この子が、一番結婚が早いだろうと思ったけれど、予想は当たった。  欠席にマルをつけた。唯ちゃんは同じグループの仲間ではなく、他のグループに属していた子だった。けれども人当たりは良いから、友達は沢山いたっけ。  私は特別仲がいい訳ではなかったけれど、友達の一人として見なしてくれていたらしい。それは有難いけれど、無職の私なんて皆に見られたくなかった。 (もう友達ごっこするのは疲れたし、いいよね)  気を取り直し、サンドイッチにかぶりつく。私って性格悪いな。なんて思いながら。  そんな時だった。 「きゃっ」  私は思わず悲鳴に近い声がもれてしまった。 「こら! ジョン! やめなさい」  飼い主が、柴犬にしかりつける。柴犬が私のサンドイッチを狙い、私の膝に乗った。
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