サンドイッチショップ『ラビリンス』

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「あ、あのっ」  私は緊張しすぎて声が裏返った。白バイのお巡りさんは、ゆっくり私の所まで、歩み寄る。  やはり、何度見てもイケメンだった。若い女性なら他にも見とれる人は、沢山いるだろう。 「こ、このお金はですね、その貰う気はなかったんですよ、全然」  私は必死で否定した。どこからこの人は見ていたのだろう。 (ええと、このお巡りさんの名前はなんだっけ?)  必死で思考を巡らす。名前なんて忘れていた。確か、今……。なんとか。今井?今村、今川。そんな名前だっけ。告知書に書かれていた。でもそんなの破棄したから、思い出せない。  そんな事はどうでもいい。私は驚きと恐怖でいっぱいになった。全身が弛緩する。フラフラになりそうだ。警察官というだけで圧があり、怖かった。 「あ、あの、このお金、返した方がいいですよね」  まさかこんな事位で、今度は何か言われるのだろうか。いや、ならないと思うけれど。もう思考が回らない。 「いや、あの人の犬が君に飛び次いで、君はサンドイッチを落としたのだろう。サンドイッチの代金をあの人はくれた訳だから、貰っておけばいいと思う」 「はぁ」  最初から最後まで見ていたという訳か。ここは、白バイのパトロールする場所なのか。二度もここで、出くわすなんて。今度からここの公園には行くのをやめようかな。そんな事を視野に入れはじめた私は、自然に足が後ろに行こうとする。
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