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「な、なんでしょう?」  私はドキリとした。何か失敗しただろうか。何かマズイ事をしただろうか。  心臓の鼓動が早くなる。何か怒られるのだろうか、と。 「今度、映画でも見に行かないかな?」 「え?」  予想外の台詞に私は、きょとんとした。  それって、デートのお誘いだろうか。少し驚いた。どう答えたらいいか迷った。 「喜んで」  しかし、私は気がついたら、OKの返事を出していた。何故なのかは、自分でも分からなかった。  拓海さんは、嬉しそうな笑顔を浮かべ「それじゃぁ」と、脱兎のように去ってしまった。 (映画か……。映画なんて何年も見てないな)  最後に見たのは、信州にいた頃、高校生の頃だったっけと、記憶が過った。  私はキッチンに戻り、またベシャメルソースを作った。また明日、クロックムッシュを作ろう。クロックムッシュを作って、拓海さんのお父さんにお届けしよう。  ちゃんと粉チーズを入れるのも、勿論忘れずに。  何故か私の心は、弾んでいた。
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