序説

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『白バイについて来て下さい』  白バイ隊員に促され、私は仕方なく指示に従う。誘導されたのは公園の駐車場だった。ここは、東京都北区桐ヶ丘。高層団地が密集する地域だった。  私の営業エリアだ。私は仕方なくビッツを駐車場に停めた。今気がついたけれど、白バイは二台。私に指示をした白バイの後ろにもう一台、白バイがいた。私に指示をした隊員は多分まだ新人で、後ろにいる隊員は多分、指導係。彼らも駐車場に、バイクを停めた。  運転席の窓を開ける私。 「こんにちは。交通機動隊の者です」  ヘルメットを取り、歩み寄って来る白バイ隊員。背は百八十位あるだろうか。私の身長は百六十だ。私より二十センチ程高い。  年は私と同じ位の年かもしれない。若い。整った切り目だけど瞳がやや大きく、痩躯。小さな唇に、割と尖った顎。一言でまとめてしまえば、超イケメンだった。白バイのお巡りさんじゃなかったら、見とれていた所だ。  けれども私の心中はそれどころじゃない。
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