序説

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「高い反則金、払いたくなかったら気をつけて下さい」  その棘のある言葉が、私の心にチクチク刺さると同時に、苛立った。そういう言い方ないじゃないの。でも反論出来なかった。やっぱり私が悪い。運転中、携帯電話を使用したのだから。 「……はい、気をつけます」  反論するのは不可。反論なんてすると、返って長くなる。今から早く、社に戻らないと駄目なのだから。  私は青切符を受け取り、叱られた犬のようになった。 「くれぐれも、安全運転で」  最後の上から目線的な、強い口調に、ムッとしたが「はい」と短く返事をした。  反則金は後日、自宅に振込用紙が送られて来て、郵便局や銀行で支払う事になるらしい。  会社に戻ると、切符を切られた事を告げた。こっぴどく叱られると思ったが、叱られなかった。ただ眉を顰められただけだった。 「ふーん、そうか。まぁいいや。宮坂さんも戻って来たしみんな、集まってくれ」
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