転生先は旅人の息子

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「だから、ガキ扱いすんなってば! おれ、将来はすっげー魔導師になって、冒険者ギルドに入って、ダンジョン攻略して、いっぱいアイテムを見つけるんだ!」 ちなみに補足すると、ガリア地方における男の子の憧れの職業は冒険者らしい。 なんか強そうなイメージだしお宝をいっぱい手に入れてお金持ちになれるから、というのが理由みたいだけれど……まあ、子供の内くらいは夢を見させてあげるコトも大切だよね。 どうせあと数年したら現実を見ないといけなくなるんだし。 「ねえ、おっちゃん。もしこの村に魔物が襲ってきたら、おれが魔法でやっつけてやるよ! お礼は100万Gでいいよ?」 そう言って僕が屈託のない笑顔(らしきもの)を見せると、オヤジはニヤリと笑みを浮かべた。 「へっ、ソイツは頼もしいね。 未来の勇者サマ!」 『なんだ、えらい綺麗な顔していても中身はただのガキと対して変わらないモンなんだな。まあ、そりゃそうだ。 ルナティックなんてこんな辺境に現れるようなものでもないしな』 オヤジの心を読むと、どうやらすっかり僕への猜疑心は無くなっているみたいだった。 このように《テレパス》のスキルを使って相手の心の動きに合わせてロールプレイをしていけば、自分の印象を操作することなど簡単なことだ。 やろうと思えば、初対面の人を出会って30分で好感度MAXにすることも可能だよ。 このオッサンの好感度をMAXにしても仕方がないからやらないけど。 あ、そうそう。 一度言っておくと、僕は別に魔導師になるつもりも冒険者になるつもりもないし、普段はああいう俺っ子口調では喋らない。 あくまでこのロールプレイに限ったその場しのぎな設定だ。 相手の心を読んで、その場その場でカメレオンのようにキャラを変えて、人心を掌握する。 それがこの10年間で僕が学んだ処世術だ。 いやー、我ながら嫌なガキだねー。 ………そう、僕が“這い寄る混沌”からもらったチートは[水鏡に写る心]すなわち、テレパスの能力だ。 そして、ハーティハートとは“暖かい心”という意味だ。 人の心に寄りそえるような優しい人になって欲しい……という願いをこめて父親から付けられた名前だ。 本当、皮肉としか言いようがないと思わない? 超うけるんだけど。
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