君のその笑顔をもう一度

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考え過ぎとだと言われるかもしれないし、悲観的だと思われるかもしれない。俺自身その自覚はあるのだ。けれどどうしようもない。 この強迫観念じみたものはそう簡単には振り払えないのだ。考えないようにしようと思っても上手くはいかず、むしろ想像力は余計な方向により豊かになっていく。 先行きは不鮮明なのに要らない想像だけは無駄に鮮明なのはどうしたことだろうか。 そんな俺だから未知に遭遇した時立ち止まるのだ。 そして後ずさり、程よいところで留まろうとする。 現状維持に努めようとする。 けれど、それも結局は上手くいかない。現状維持などまったく出来てはいない。 事実彼女とのことを想い、現状維持をしようとした結果、彼女との関係は終わった。 壊れることを避けるための行動で壊してしまったのでは本当に本末転倒というものだ。 俺は何を守りたかったのか……? 俺は何を守れたのか……? 何も守れてはいないではないか……! 俺は失ってしまった。他でもない自分自身の手によって。 それは俺の手の届かないところへ、そしてもう二度と戻らない。 いや、違う。 そもそも俺はその大切なものを掴んでなどいなかったのかもしれない。 傍らにあるからと安心して、本当に大事なところでそれに手を伸ばそうとはしなかったのだ。 どうして何もせずしてそれがずっと傍らに、俺の隣にいてくれるなどと思ってしまったのか。 結局俺は彼女が消えてしまう最後の最後まで手を伸ばすことは出来なかった。 まったく愚かしい。
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