君のその笑顔をもう一度

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このことに限らず俺は行動しない。動けない。踏み出さない。 先へ進みたいと願いながらも、直前で足踏みする。 俺ははっきりと分からないものが怖い。 不透明、不鮮明、不確定。 靄がかかった中から、もしくは闇の中から何が飛び出してくるか分からない。それが怖い。 そんな未知が怖い。 怖いから俺は動かない。 見晴らしのいい、丁度いい、ほどほどのところで留まり、それを維持しようとする。 昔からずっとそうだ。 きっと俺は変化というものが嫌いなのだと思う。 いや……少し違うかもしれない。変わること自体は別に良いのだろう。 俺が嫌なのは変わったことによって生じるかもしれない自分の世界の崩壊だ。 自分の周りの環境、人間関係、そして俺自身の心、それらが壊れるかもしれないと思うとどうしようもなく怖くなる。怖くて怖くて動けなくなる。 不透明で不鮮明で不確定なものの中にはそれが潜んでいる。無防備に飛び込もうものなら完膚なきまでに叩きのめされる。それこそもう立ち上がれないほどに。そんなことばかりを想像してしまう。
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