2:ルアンナとクルス 2

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 ルアンナはハーブティーの最後の一口を喉に流し込む。   「さて……部屋に戻るか」 「今回の研究は、学会には間に合いそう?」 「私を誰だと思っている」    ふふんと誇らしげに胸を張ってやると、「そうだよねえ」とクルスは笑った。   「あんまり無理しちゃ駄目だよ。また机で寝てたら俺がベッドに運んで悪戯するからね。無理せず机で寝てくれるなら歓迎」 「悪戯は余計だ!」    真っ赤になってティーカップを投げつけると、クルスはそれを上手に受け止めた。   「じゃ、頑張って」    そう言って、笑いながらクルスは台所へ引っ込んだ。その後ろ姿を、ルアンナはしばらく見ていた。  研究を応援してくれる人間など、身近にはいなかった――   (……悪い気分ではない、な)    研究とは自分のためにやるもの。しょせん自己満足。魔術の発展のためなどと大義名分はあるが、どの魔術師も結局は自分の術の体系を他の術師に扱われるのをよしとしない。元々魔術師協会自体無理やり作った組織であり、学会での研究報告も、大半の術師は嫌々やっているのが分かる。  だから、魔術研究は孤独だ。魔術師は仲間ではない。単なるライバルである。  応援など、されるわけがなかった。  ……これまでは。    何だか胸の奥がむずむずした。
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