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第5話
薬草取りから数日後、宵は佐助に声をかけられた。
「宵、その仕事が終わったら六郎の所へ行ってくれ。なんか呼んでるぞ。」
ちょうど洗濯物を干していた宵は分かりました、と返事をし、仕事を終えると六郎の部屋に向かった。
襖の前に立つと「入って」と穏やかな声が聞こえ、宵はおずおずとはいった。
「失礼します………あの…私を呼んでいた…と聞いたのですが……」
「えぇ、呼んだ。」
六郎は女装をしていて、とても美しい女のようにしか見えなかった。
声音も女性のように穏やかで動きもお淑やかだった。
宵は促されるまま六郎と対峙するように正座した。
「今回呼んだのは私の仕事にちょっと付き合って欲しくてね。」
「仕事………ですか?」
「えぇ、悪いやつを取り締まる仕事なんだけれど、私の他に美人がもう1人欲しいと思っていて、宵は適役だと思って誘ってみた。」
「それは…何も出来ない私でも役に立てますか…?」
宵は了承の姿勢を示しながら聞いた。
「あぁ、ただ着飾って私の側に居るだけでいい。女1人だとやっぱり目立つからね。女2人なら色々やりようがあるんだよ。」
「そうですか………私で良ければ協力させてください!」
「ありがとう。じゃあ明日、夕餉の後に部屋に迎えにいく。」
六郎は優しく微笑んだ。
「分かりました。」
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