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「鈴蘭、何してるの?新入りの女中にいきなり手裏剣投げて」
才蔵は咎めるように少女を睨む。
鈴蘭と呼ばれた少女はビクッと肩を震わせる。
「才蔵様、この子は一体……」
怯える少女を庇うように才蔵に話しかける。
「あぁ、これは鈴蘭。猿飛佐助が拾ってきた子供で上田城お抱えの薬師。」
「薬師?こんな小さい子が……」
「子供だからと馬鹿にするな!」
「ほら、すぐに怒るでしょ?典型的な子供。」
煽るように才蔵が言った。
「才蔵様…そのように煽らなくても……」
宵は苦笑する。
「鈴蘭ちゃん?…私は幸村様にここで診てもらうよう言われたのだけど……貴女でいいの?」
これではらちがあかないと、宵は本題に入る。
「あぁ、幸村様から聞いてるよ。全身怪我してたんだろう?…才蔵、出ていって。後で診るから」
「はいはい」
才蔵が去ると、鈴蘭は襖を閉めて宵を正面に座らせた。
「幸村様が言った女がまさかこんな美人だとは思わなかった……」
鈴蘭はボソッと呟いた。
「え?」
「何でもない!私は鈴蘭、あんたは?」
「宵。」
「宵……ね、分かった。じゃあ傷を見せてもらっていい?」
「分かった。」
宵は頷くと着物を脱いだ。
そこには着物着たた上から見える手や腕、足首などには包帯はないものの、その他の部分には包帯が巻かれてあった。
「こんなほぼ全身に傷が?」
「そういう訳じゃないんだけど、やっぱり包帯巻いてるとなんか落ち着く…というか……」
そう言って、包帯を解いていった。
すると腕や脚に刃物で切れたような傷がいくつもあった。
「この刃物で切れたような傷は何かしら?」
「刃物……?」
「怪我したのはいつって言ってたっけ?」
「5日…くらい前……?顔の擦り傷は翌日には治ってた気がする。」
「………だとするとすごい回復力ね……それに傷は全部ほぼ塞がってるけどこの刃物、かなり切れ味良いはず……そう考えると傷もかなり深いはずよ……でも傷はもう治っていて………」
鈴蘭は傷を見ながらブツブツ呟いた。
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