第1話

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「………ん」 少女は褥の上でゆっくりと目を開けた。 「大丈夫かい?」 少女の視界に自分を覗き込む女性の顔が映る。 「あの……ここは…」 少女はゆっくりと体を起こそうとすると女性が止めた。 「ダメダメ!ひどい怪我だったんだから!」と、再び褥に寝かされる。 「大丈夫かい?あんた、一昨日の大雨で流されてきたんだろ?川辺で倒れてるの見たときはダメかと思ったよ。」 「一昨日の……大雨……?」 少女の中で何かが揺らいだ気がした。 「覚えてないかい?それよりどこの誰だい?名乗っておくれ」 「名前………………宵…」 「宵って言うのかい?良い名前だねぇ。ここは小さな小料理店なんだけどね、私はそこの女将をしてるんだよ。」 「女将さん………わざわざありがとうございます」 宵は深々と頭を下げた。 「にしても、なんで川に?」 「……川?……………分かりません……なんで川に……わからない……わからない……」 宵は泣きそうな声で頭を抱えた。 「まさか流された時頭を打ったせいで記憶喪失になったのかい?」 「頭を………?」 「あぁ、あんたを診た医者が頭も打ってるって言ってたよ。」 「……そう…ですか」 「記憶喪失は辛いねぇ………持ってたものも全部流されて、服も着れないくらいボロボロだったし。」 女将の言うとおり、宵は寝間着を着せられていた。 「大丈夫です。でも私働かなきゃいけませんね………」 「あんたは何が出来るんだい?」 「分かりません………」 「じゃあ料理を教えよう。……と言いたいところだけどその怪我じゃあ何も出来ないよ。」 宵は顔以外全身包帯で覆われていた。 「大丈夫ですよ、これくらい」 宵はそう言って簡単に立ち上がった。 「痛くないのかい?」 「はい!全然大丈夫です」 宵は笑顔で頷いた。
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