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2人が上に回ると宵は鈴蘭を説得し始めた。
「鈴蘭は足は早いけど身のこなしはそこまでに見える。なら私の方が……」
「何の鍛錬もしてないただの女中が偉そうにしないで」
鈴蘭は宵を睨みつける。
「貴女が怪我すれば佐助様が悲しむ」
「怪我しなければ良いだけのこと」
「無理よ。下手すれば落ちる。」
「大丈夫だってば!!」
鈴蘭は1人で崖を降りていく。
宵も続こうとしたが、足場的に1人が限界だ。
「無理だと思ったらすぐに言って!手を貸すから!」
「あんたの手助けなんていらない!」
そう豪語したものの、宵の思った通り、体重移動も知らない鈴蘭では簡単に足場が崩れてしまった。
「きゃっ!!」
鈴蘭が近くにあった弦を掴む。
「鈴蘭!!」
宵は縄を鈴蘭の元に垂らすと、鈴蘭はなんとかそれを掴んだ。
すると、かなりの力ですぐに上まで引き上げられた。
「はぁっ……はぁっ……」
鈴蘭は肩で息をしながらカタカタ震えてその場に座り込んだ。
「大丈夫、ちゃんと私が取ってくるから。」
宵は優しく微笑んで頭を撫でて、そっと崖を降り始めた。
断崖絶壁。落ちたら最後、命は無いだろう。
だが宵はまるで慣れているかのように易易と降りていく。
そしてあっという間にその薬草の元に辿り着いた。
「これで良し。」
満足気に頷き、薬草を帯に挟んで崖を素早く登り始めようと岩に手をかける。
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