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そしてあと少しのところまで来たところで掴んでいた岩が崩れ始めた。
宵の手は掴むところを失い、
「宵!!」
鈴蘭が宵の手を掴み、助けようとするが、鈴蘭は非力な女の子。
「鈴蘭ダメ……貴女まで落ちてしまう………
」
宵は空いた手で帯に入った薬草を取り出し、鈴蘭に渡した。
「なっ……!?」
「大丈夫、それを持って佐助様のところへ。」
「嫌に決まってるでしょ!?」
鈴蘭はカッとなって怒鳴った。
「私のせいで誰かが死ぬなんてもう嫌なの!」
その言葉には……かつての暗い過去が秘められていた。
「でもそれで鈴蘭まで死んだら!」
「それでも!!宵をしなせる訳には行かない!」
気丈にそう言って入るが、鈴蘭の力はだんだん抜けていく。
鈴蘭ではもう限界なのだ。
そしてついに鈴蘭のいるところまでヒビが入った。
このまま手を離さなければ十中八九鈴蘭も一緒に落ちるだろう。
「鈴蘭」
宵は優しく微笑んで力強く鈴蘭の手を振り払った。
「宵!!」
鈴蘭は再びその手を掴もうと手を伸ばすがその手は空しか掴めない。
宵の体は真っ直ぐ崖底に向かって落ちていく。
その時向かいの崖から誰かが飛び上がり、そっと宵を持ち上げた。
「あんた薬草の為に死ぬつもり?」
そこには伊賀の忍装束を纏った才蔵が宵を抱き抱えていた。
そして呆れたようにため息をついて崖の上まで行った。
「才蔵様!?」
宵は驚きながらもホッとした。
「どうしてここに……?任務でいないと聞いていました…」
「さっき帰ってきた。そしたら佐助の使役動物が見えたから。」
「それで……来てくれたんですか?」
「まあね、なんか嫌な予感もしたし。」
才蔵はそっと宵を地面に下ろす。
「怪我は?」
「大丈夫です」
宵は嬉しそうに顔を綻ばせて頷く。
「全くお前ら何無茶してんだよ………この犬が俺を呼びにこなけりゃ大変なことになってたぞ」
佐助がやれやれ、とため息を着きながら言い、指をさした。
そこには昼に触れ合った山犬がいた。
「お前らの危険を察して俺を呼びに来たんだろうな………」
「賢い犬ですね」
宵はにっこり微笑んで山犬の頭を撫でた。
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