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六音としての演技を続ける彼を見て、今も誰かに見られているかもしれない、という緊張感を抱く。
奥の部屋には金箔の豪華な襖があった。
そこの前には2人の用心棒のような男が立っていた。
「六音さん、お待ちしておりました。」
「今日は新入りを連れてきたのだけれど………先に挨拶させて頂いても?」
宵の姿を見ると2人はすぐに了承した。
「失礼します」
恭しく六郎は襖を開ける。
宵もそれに続いた。
中には数人の美人の芸妓と男が1人。
先ほどの男達とは比べ物にならないほど身分も身振りも良さげだった。
なにしろ格好から態度から全てが上に立つ人間の様だった。
「おお、六音。今宵も美しい。その女は新入りか?」
「はい。十六夜と申します。戦で親を亡くし、1人生きる術も分からず路頭に迷っているところを私が拾ってまいりました。」
六音の話を聞き、その設定に乗じる。
「初めまして」
宵は六郎のように恭しい態度で頭を下げる。
「ふむ………」
男は宵を値踏みするように上から下まで見て、満足気に頷いた。
「なるほど。流石は六音だ。うむ、いいだろう。ここで働かせてやる。」
「ありがとうございます」
六音はにこやかに微笑み、宵も礼を言った。
「さて……と、では今宵は2人に相手をしてもらうとしよう。そしてこの女達はもう要らんかのぉ……下がれ。」
男は冷たい声で女達に命じた。女達はおずおずと部屋を出ていった。
「今日は私にとって重要な客も来ておる。その方の接待をお前に任せるぞ、六音。」
「承知しました。」
そして襖が開いて、1人の男が通された。彼の後ろには3人の護衛が控えていて、それほどの重要な人物なのだとわかる。
だが、その男を見て六音は驚いた。
男もまた六郎を見て、怪訝そうな顔をしている。
「そやつ…………」
客の男は六郎を見て、刀を抜いた。
「ど、どうされたのですか!?」
主人は驚く。
「こやつは敵の間者ですよ。以前私が仕えていた主はこやつに殺されましてね……」
男は手を叩く。すると護衛が部屋に入ってくる。
「こやつはかなり腕が立つんですよ。どうせ今もどこかに武器を隠し持っているんでしょう!」
男は六郎に斬りかかる。
そして六郎はどこからとなく短刀を出し、その刀を受け止める。
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