第5話

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「まさか貴方がここに来るとは思いませんでした。」 六郎は殺気を放ちながら言った。 「いまこそお前を殺し、主の仇を!」 護衛の3人も六郎に向かって斬りかかる。 「くっ………」 短刀一本しか持たない六郎はなす術がない。 だがそこに宵が六郎を庇うように立った。 「なっ!?お前何を……」 宵は護衛から目をそらさず睨むことしか出来なかった。 「お前もそいつの仲間か!」 護衛の男は宵に向かって刀を振り下ろす。 「何馬鹿な真似してんの?」 呆れたような声と共に狐の面を被った才蔵が現れた。 「才蔵様………」 「……………邪魔」 才蔵は宵を突き飛ばし、刀の間合いの入らない所に追いやった。 一目で才蔵と分かったがどこかで見たような気がした。だが状況がそれを考えさせなかった。 「何でここにいる?」 「俺はそれの監視だからね。」 才蔵は面倒臭そうに言うと、すぐに護衛の3人を殺した。 それに合わせるように六郎も短刀で男の心臓を一突きした。 そして逃げ出そうとする主人も捕らえ、殺した。 その後役人達によって客達や芸妓は捕えられた。 1人状況がうまく理解できない宵は恐る恐る問いかけた。 「あの………この状況は一体……」 「あんた、利用されたのに気付いてない訳?」 呆れるように才蔵が言った。 「利用………」 「ここの店の主人は女達を攫ってきて無理やり芸妓にして働かせていた。そこでの利益を元手に地位を上げ、客達に賄賂を兼ねてここに招き、共に反乱を起こそうとしていた。そうして六郎はこの店への潜入までして、ついに今夜主人を殺し、他の客達を捕らえ、女達を解放するつもりだった。だが主人を殺す上で側にいる女達を部屋から追い出す必要があった。その為には他の芸妓以上に美しい新入りの女が必要だった。そこであんたが選ばれてんだ。」 「…………そう………でしたか……」 「俺は幸村様の害となるやつは何としてでも徹底的に排除する。」 一人称が「俺」になった彼は任務の終了と宵への演技を終えたようですっかり男に戻っていた。
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