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才蔵や六郎の話を聞き、宵は六郎を見た。
「私はお役に立てましたか?」
「は?」
予想外の問いかけに六郎は驚く。才蔵も驚いていた。
「何いってんの?あんた俺のせいで死にかける所だったんだよ?第一あの時俺を庇うなんて馬鹿な真似………」
「すみません……六郎様の実力を知らずに体格だけで勝てないと判断してしまいました………」
「いや………そういう事じゃ……なんで俺を庇った?」
「だって六郎様が怪我をしたら周りの人は悲しむでしょう?」
「……………………え?」
「私は間者と疑われている始末ですし多少怪我をしても死ぬことはないかなーって思ってましたし。」
「…………に……ってんの…」
「え?」
「何馬鹿なこと言ってんの!?」
六郎が声を張り上げる。
「あんたは女なんだよ!俺は男。自分の身は自分で護れる!あんたは女なんだからもっと自分の身を大事にしろよ!体に傷が残ったら大変だろ!?」
「…………す………すみません……」
その迫力に圧倒され、宵は謝罪の言葉しか出てこなかった。
「悪いね、こいつ、女は体を大事にして、平和なところで恐怖なんて知らずに暮らしてて欲しいって言うやつだから。」
「……………そう……でしたか……」
才蔵の言葉に宵は少し微笑む。
「女性を大切にする方なんですね、六郎様は。」
「え………」
その言葉に毒気を抜かれたのか六郎は戸惑った。
「お役に立てて良かったです」
宵はにこやかに微笑んだ。
利用されてもそれを気にせず周囲の身を案じる彼女を見て六郎は間者と疑っていた自分に罪悪感を抱いた。
「悪いな……疑って。」
六郎はボソって呟いた。宵に聞こえないと思って。
だが、宵はしっかり聞いていてにこやかに微笑んだ。
「………………邪魔……ね」
城に戻り、状況を幸村に説明し、部屋に戻る頃には夜が明けかけていた。
1人部屋にいる宵は才蔵に言われた言葉を思い出していた。
邪魔、と言われた。
その言葉が酷く心にのしかかった。
自分は戦えない。そう言われるのは仕方の無いことだし、彼は邪魔と言いつつ助けてくれた。
それなのにその言葉がとても怖く感じた。
「……………どうして?」
不安げに宵は呟いた。
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