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3人は木の前に到着した。だが3人はすぐに降りれなくなった、の言葉の意味を理解する。
その木はとても細くてろくに足をかける場所すらない。どうして登れたのか不思議なくらいだ。
弥彦、と呼ばれた子供はその木のかなり上に猫を抱えて震えていた。
かなりの高さがあって落ちたら無事では怪我をするのは目に見えていた。
「弥彦は木登りが得意だから妙だとは思ったんだ……」
2人は助けに行きたいところだが体格的に枝に手を掛けただけで折れるだろう。
「子供ならぎりぎり登れそうな木だが………」
いくら子供でもこの木を登るなど至難の技だ。
「………………」
宵はその木をじっと見て、次の瞬間、ものすごい速さで登りだした。
「宵っ!?」
その行動に周りは青ざめる。こんなのはただ命知らずな行動に見えたのだ。
だが、宵はあっという間に子供の所まで辿り着いた。
「大丈夫?」
安心させるような穏やかな声で声をかけ、もう大丈夫というように木の上で器用に子供を抱きしめた。
「宵!無理すんな!ゆっくり降りてこい!」
焦る青海入道とは対照的に宵は穏やかに笑みを浮かべた。
「必ず無事に降ろしますから大丈夫ですよー」
宵は木の上から縄を垂らした。
「私が持っておくからここを降りて。」
弥彦はこくりと頷くと震える足をゆっくり動かして縄を掴んだ。猫は弥彦の方の上で大人しくしている。
するするとゆっくり縄を降りていく様子を皆固唾を飲んで見守った。
だが、あと少しで弥彦が地面に着く、という所で宵の乗っている枝が大きな音をたてて折れた。
「っ!?」
「宵っ!!」
宵のいた場所はかなりの高さ。武道もなにもしていない宵に受け身なんて出来ないし、第一受け身が出来たところでこの高さなら怪我は免れない。
宵は咄嗟に、ほかの枝に手を伸ばすが到底届かず、その手は宙をつかむ。
(……………あれ?この感覚………)
木から落ちる宵はどこか冷静だった。1度同じような事が起きたような感覚に陥った。恐怖感はなく、不思議と焦りもなかった。
下に対する痛みを恐れもしなかったが、宵は痛みを感じることは無かった。
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