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第1話
ザーー……
その日は叩きつけるような大雨だった。
そして夜闇に紛れて火花を散らす二つの影。
黒に身を包み、狐の面を被り、素顔を隠し、身軽そうな格好をした男と鎖鎌を持ち、振袖で何枚も着込んで顔や腕を包帯で隠した男。
多く着込んでいるせいか本当の体型より大きく見えた。しかし動きは黒い男と同じかそれ以上の速度で動いている。
だが、大雨で視界が悪く、地面もぬかるんだ山の中。
たくさん着込んだせいで雨水を吸い重さが増し、男の動きが鈍る。
それを好機と言わんばかりに男はクナイを投げつけ、鎖鎌の男を確実に傷つける。
包帯が裂け、血が流れるがその痛みを感じないかのように鎖鎌を振るう。
だが徐々に押されていき、全身に傷が増えていく。
ついに崖際まで追い詰められた。
雨によって地盤が緩んでいて、着込んだ男は崖から転落した。
落ちる前、鎖鎌を投げるが地面がぬかるんで刺さらない。
高い崖で下は川。流れの強い濁流が流れていて、男も後追いを諦めた。
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