番外編3『ストーリー』

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 思い耽っていたところに、 「ねえ、藍子ちゃん」 「どうしたの?」 「よかったね。仲直りできて」  かざみは、計算をできるようなキャラじゃない。  どこか抜けてて、ほっとけない。  だから、これも思い付きでやったんだ。  美鶴とは違って、何の計画性もなく。  ただただ、やりたいようにやった。  悪く言えばエゴなんだけど、あたしはそれでもいいと思った。 「あんたがそう思うなら、そうなんじゃない?」 「今の台詞、弟さんに似てるね!」 「はぁ!? あたし、あいつのこと嫌いなんだけど!!」 「え? そんなに悪い人じゃないよ?」 「空気読みすぎるところがダメ」 「中須賀君は?」 「認めた奴を絶対視するところかな。ガツンとするところは、ガツンといかなきゃ」  そうやって、かざみに対して言葉を返していくと、みんながこっちに集まってくる。   「嘉菊って中学の時、どうだった? 私について、愛してるって……思ってる?」 「吹原先輩の思った返事は嘉菊に止められていますけど、あいつが貴女を嫌いじゃないのは確かです」 「玄馬君はどういうことをしたら喜ぶかな?」 「基本、お子様ファーストだからね。弟や妹と遊んであげれば喜ぶよ」  わいわいと集まるみんなに、ちゃんとアドバイスをしてやる。  でもそっか。痴女は、あたしと違ってグループにいなかったからそんなに詳しくないんだ。 「みっくんが最近読んでる漫画は」 「知ってるけど教えない」 「んもう、いじわる!」  人が集まっていく。  昔のあたしが信じられないくらいに、輪が広がっていく。  全部、かざみのせいだ。  このお節介のせいで、面倒くさいことになった。  でも、悪くないかな。  目頭がなって上を見上げる。  すると、空からあたしを見守っていた夜空が、  その星のひとつを降らせているのが目に映った。 「藍子ちゃんどうしたの?」  不思議そうな顔でこっちを覗いてくるかざみが目に映った。  だけど、あたしは今見た景色を独り占めすることにした。  仲直りした親友と、新しくできた仲間に囲まれて。  あたしは気が済むまで星を堪能するのだった。
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