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二人以上の人間が入ることのできる擬似的な密室空間。
入った以上、浮気(厳密にいうと違う)のアリバイを作ってしまうことになるのだけれど、背に腹は代えられない。
なにより、このプリクラとやらには、証明写真において微塵も利便性を感じられないデコレーションという機能がある。
僕の顔を怪物風にデコってしまえば、そう簡単に特定されることは無いだろう。
「えっと、トイレっていうのは嘘で……」
「じゃあ何? さっさと映画に行こうよ」
くるりと階段を上る準備をするランの袖口を握る。
そして、
「つるみん、久々に会えた嵐子ちゃんと思い出が作りたいの。だから、お願い……プリクラして?」
「最初、あたしの意見を無視っといてよく言うよ」
「だって、急いできたから、メイクとか自信なくて。藍子ちゃんと不釣り合いじゃないかなって……ゴメンね。ワガママなつるみんに振り回されたくないもんね」
「だっ、誰もあんたと写真撮りたくないなんて言ってないじゃん」
耳まで赤くなるラン。
クールに気取っている自分を演出しているけれど、わかりやすい性格をしているのは中学生の頃と変わらない。
というか、仮にも惚れた男とのツーショット写真が女装な事には文句を言わないのか?
なんてセリフが頭をよぎった数秒後に、かざみの男装がアリだと感じてしまった僕は、何も言えなくなってしまった。
鶴見式虚実微笑を顔面に貼り付けながら、いざプリクラの機械がある方へ。
カーテンらしきものを開き、いざ籠の中へと突入してみれば、意外と広めな内装に驚く。
思い返せば、不良のときにつるんでいたギャル六人が機体の中で蠢いていたので、二人で撮るには広すぎるぐらいなのか。
コインを投入したランが、手際よく機械を操作する様を眺めながら、過去の事を思い返すと、こいつと初対面の頃の出来事が脳をよぎった。
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