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――◆――◆――◆――
『姉ちゃん。しばらく教室には近づくな』
と、ジョイントから通知が来た。
弟さんからだ。絵文字もスタンプも無いから雰囲気が怖い。
いつもなら、絵文字や顔文字を使ってくるのに、今日はなんだか変な感じがする。
「かざみちゃんも来たの?」
「サツキちゃんも?」
「私はこれ」
学食から教室に戻る最中のこと。
私とサツキちゃんは、互いのメッセージを見て首を傾げあった。
サツキちゃんの方には『神よ、今すぐ来られたし。美鶴の教室』と書かれている。
私には近づくなと言って、サツキちゃんは呼ぶって、どういうことなんだろう。
「私の名前、略されてるんだけれど」
「あ……崇められてるんじゃ……ごめんなさいっ」
フォローした瞬間に睨まれて、委縮してしまう。
「小学校のとき、よく男子からバカにされてたのよね。神様とかダブ神様とか金剛力士像とか」
携帯電話を片手でタイピングしながら、サツキちゃんは溜息をつく。
「カ行君からのメール返しているうちに、クラスには近づいてきてるし、結局どうすればいいのかしら? それに、私が余所のクラスに行って、かざみちゃんが自分のクラスから離れるっていうのも変だわ」
「そうだよね。なんでだろう」
「もしかして、浮気?」
じっと私の目を見つめるサツキちゃん。
への字の口元にちょっぴり物怖じしてしまう。
「御崎君。違う女子を好きになったとか」
胸が少しだけ締め付けられた。
この気持ちは、なんだろう。
「でも、あれだけ口説いておいて、別の女に行くって頭おかしいし……だとしたら……」
「女子に襲われてる…………なんて」
「そんな事あるわけないじゃない。だって、御崎君よ? 私以上に口達者な子に限ってそんな――」
「?」
サツキちゃんが口を止めたことに違和感を覚えた私は、その表情が一点を見つめたまま固まっていることに気付いた。
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