13人が本棚に入れています
本棚に追加
「あんたじゃ、あたしには勝てない。中学二年の頃から、ずっと一緒だったあたしが、中学卒業寸前に出てきた見知らぬ誰かさんになんて」
「純粋な実力で負けるのがわかってるから年期で勝負する魂胆かしら?」
「あんたは知らない。美鶴がどれだけ苦しんだか。小学生の美鶴が……」
「おい、ランコ。これ以上は言うな」
サツキちゃんとの口論に弟さんが割って入った。
「美鶴との付き合いでいえば、俺が一番の先輩だ。だからこそ言ってやる。お前に美鶴は渡さねえ」
「何? お兄ちゃんが取られるのが嫌なの? 兄離れしたら?」
「あいつの過去はもう終わった。それをほじくり返してまで美鶴を奪おうとするお前に、あいつは任せられねえよ」
弟さんと嵐山さんは顔見知りらしい。
美鶴くんを好きな人の弟だったら当然なのかな。
「嵐山よォ。手前、兄貴と姐さんに迷惑かけるならともかく、一般人にガン飛ばしちゃ駄目だろうが。それが仁義だろ」
中須賀君の嗜める声が響く。
でも、嵐山さんは、
「うるさい」
「は?」
「うるさいうるさい! なんで、あたしじゃダメなの!? あの時の美鶴の苦しさも辛さも全部わかってるのなんて、あたししかいないじゃん! あたししか……美鶴のことわかってやれないじゃん」
今にも泣きそうになりながら叫んだ。
攻撃的な態度はきっと、自分を認めてほしいから。
それだけ、美鶴くんの事を大切に想っている人を前に、サツキちゃんを壁にして竦んでいる私って、人間としてどうなの?
ここでいれば、きっと私は安全。
サツキちゃんはずっと『私』として嵐山さんに認識されて、言い争いを続けることになる。
弟さんのメッセージは、こういう状況下のままやり過ごすことが、私を傷つけない最善策を考えた結果なんだと思う。
だけど、私の大事な人に恋をしている子に対して、ちゃんと向き合わないことは、あまりにも失礼だと思う。
最初のコメントを投稿しよう!