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呼吸を整えて、右足からゆっくりと前進。
大丈夫。嵐山さんは悪い子じゃない。
誰かを大切に思う気持ちを持っている人が、悪い人なわけがない。
「嵐山さん」
「あんた誰?」
近づいた私に敵意を剥き出しにする嵐山さん。
それと一緒に、目を丸くしたサツキちゃんの表情が映る。
「私が……鳳かざみです」
「今まで、あたしがアウェーなのを見て笑ってたの?」
「違うよ。違うけど……嵐山さんにとってはそうなんだと思う」
そういう捉え方をされても仕方がない。
私はそういう判断をしてしまった。
「あたしにとっては……ね。ずいぶん余裕のある言い回しじゃん。言いたいことがあるならハッキリ言えば?」
嵐山さんの姿が、中学三年の頃の美鶴くんとダブって見えた。
サツキちゃんと料理対決をした時の、相手に対して1ミリの容赦もなかった頃の美鶴くんに。
きっと、私が敵対関係にあったら、美鶴くんはこんな対応をするんだと思う。
「えっと……私は……」
「となりの子に代弁してもらう?」
「ううん。私は嵐山さんとちゃんと話をしたいから」
「そう。あたしが言いたいのはひとつだけで、話すことなんて何もないんだけどね」
嫌いな人とは話もしたくない。
今の美鶴くんでも言いそうだなあ。
バレンタインの時にお菓子を作った時も、似たような反応されたもんね。
「美鶴から手を引いて」
サツキちゃんが言われていた事と同じ内容を告げられた。
「……」
言葉が出なかった。
何を言っていいのかが、わからなかった。
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