第3章「予想外の猛襲」

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 嵐山さんは、美鶴くんの事を好きでいる。  だったら、美鶴くんの告白に返事をできずにいる私より、嵐山さんといることの方が、美鶴くんにとってはいい事じゃないのかな。  私と過ごさなかったことで、美鶴くんが得られるものが沢山あるのなら。  美鶴くんを苦しみから解放させてあげるべきだと思う。  だけど、もしもそれが現実になったとしたら。 (寂しい)  心に浮かんだ文字にはっとする。  一言で表すにはあまりにも複雑な気持ちだけど、これしか私の感情に似つく言葉がない。  でも、それは私のワガママでしかないから。   「嵐山さん、私は……」 「おー。ランランだぁ~。おひさー」  美鶴くんと嵐山さんは一緒にいるべき。  そう言おうとしたのを妨害するように、背後から誰かがぬるりとやってきた。 「ひよりん呼んだら絶対ドンパチするからさ~。とりあえず、頭脳明晰なヨモギちゃんが来ました~」   のんびりした同級生の女子が、教室の緊張感なんて全然気にしないままヨタヨタと歩く。  ランランって嵐山さんの事だよね?  確認しようと思って本人の顔を覗くと、さっきまでのテンションからうってかわって青ざめた表情になっていた。 「蓬……なんで? 暁光学園にいるんじゃなかったの?」 「暁光学園はエスカレーターだからねぇ。いちいち深更高校に行きたいって思うのは、ひよりんぐらいだよね~」  日和ちゃんって、美食研究会で部長をやってる日和ちゃんでいいんだよね?  この子は確か、日和ちゃんと仲がいい青野さんだったかな。  二人とも、嵐山さんと知り合いだったんだ。 「日和も……いるんだ」 「歌はもう引退して、今は美食研究会だよ。メシマズのひよりんが料理だよ~。信じられる?」  対照的に明るく振る舞う青野さんに呆然とする。
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