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「ねえ、青野さん」
「んー?」
「私、余計な事しちゃったかな? 最初から、青野さんに任せたらよかったんじゃ……」
ここまで口にして、自分の台詞が誤解されかねないことに気付いた。
もしかすると「最初から青野さんに任せていれば、私は傷つかなかった」って思われたんじゃ?
「余計よ。でも、私は貴女の余計なところが好きなの。もっと自分に自信を持ちなさい」
「それ、あたしが言おうとしてたのにー。さっちゃんの、名言ドロボー」
「余計な事を言っている暇があるなら勉強しなさい。今日、漢字の小テストよ? 滞るって書けるの?」
「簡単だよー。さかなへんの隣にくが三つで、その下に田んぼを書いた漢字と凍るって書けば……」
「テストの内容より難しい漢字覚えてどうするの!? 鯔を凍らせる機会なんて滅多にないでしょ!」
「さっちゃんが怒った。ママみたいで怖い~」
二人のコントに笑みが零れる。
だけど、その表情は本心からのものじゃなかった。
理由はちゃんとわかってる。
自分が言おうとした文字が、心に深く突き刺さっているんだ。
『私は、美鶴くんと嵐山さんは一緒にいるべきだと思う』
喉元から出ようとしていた言葉が、ずっと頭の中で響くのを感じながら、私はみんなと談笑する。
こうして私は答えを後回しにしていくんだろうな。
今も昔も変わらない現状のせいで自己嫌悪に陥ったことを悟らせないように平静を保ちながら、心で呟いた。
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