第3章「予想外の猛襲」

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 ――◇――◇――◇――  そんなこんなで、今は午後五時。  密度の濃い学生生活を乗り切ったと思いきや、運命というやつは僕に安息を与えてはくれないらしい。    この一週間、僕はランとデートしなくてはならない。  今回、僕が選んだ場所は、海岸通りにある海鮮市場だ。  雰囲気は道の駅らしく佇んでいる建物なのだけれど、この施設がどういう正式名称を持っているかは忘れた。 「曇天か。雨でも降りそうだな」  防波堤の先端にて、  夕焼けで照らされるはずの海は、心境を暗さを連想させるような群青だった。  真夜中になるとイカがよく取れるに違いない。  この地域はタウン誌でも釣りの名所として扱われていることが多いのだ。  そういえば、先ほどからナルトという地名をしつこく話題に挙げているけれど、徳島県民以外の方々は、鳴門(なると)という地名を知っているだろうか。  大概の人は同じ読み方をする忍者しか頭に浮かばないだろうと思うので、県外の人には説明しなければならないことだろう。  そもそも、徳島県自体が四国の中でマイナーな県なので、そこから語らなければならないのかもしれないけれど、これを説明したら何枚もの作文用紙を活字で潰さなければならないことが始まるので、当市のみを説明文を考えてみようか。  まず、僕たちが過ごしている場所は徳島市周辺。  ざっくりいうと徳島県の中心。  ちなみに地図的な意味ではなく、経済効果的な解釈で考えた場合の話だ。  日本の中心が東京と云われているように、徳島県の中心は徳島市なのである。    なお、そこから北側に進めば鳴門市となる。  ここは鯛だけでなく海老や(たこ)、ワカメといった豊富な食材に恵まれた海産物の宝庫。  さらに言えば鳴門金時という芋もある。  ああ、素晴らしき鳴門。  もしかすると、名産品(アイテム)の種類事態は、徳島市よりも多いのではないだろうか?   テトラポッドに砕ける波と水面にぼんやり映る魚影を眺めていた僕は、この地のことを考えながら地べたに座り込む。  ジュースを買いに行ったランは、何をしているのだろうか。  魚市場で寄り道をしていなければいいのだけれど。
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