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ランの実家は徳島と鳴門の中間地点にあったな。
ということは、今までのデートコースは迷惑だったのかもしれない。
もっとも、僕がかざみに対して抱いている気持ちを、僕に対して持っているとするのなら……。
いや、考えないでおこう。
ちゃんと僕に宣言したとはいえ、ランの思考を勝手に読み取って分析したところでどうにもならないだろう。
……恋愛感情はロジックでは語れない。
自他問わず、だ。
こう見えて、ランのことはちゃんと尊重している。
かざみが僕に新たなものを見せてくれた最愛の女性だとすれば、ランは僕の全てを理解してそれを認めてくれた大切な仲間だ。
かつて僕を虐めた人間に復讐することを計画したとき、嘉菊を含めた全てのメンバーが恐怖に顔を歪めながら制止しようとしているなかで、ランだけが僕の背中を押してくれた。
結果的に復讐は成功した。
かつての怨敵は、仲間や家族からの信頼を失い、最近では精神科に入院していると聞く。
「かざみは僕を止めた。ランは僕の背中を押した。きっと、どっちも正しい答えなんだろう。けれど、ランには悪いことをしてしまっ……チャイ!?」
過去の情景を分析していたところに、背後からヒンヤリしたものの接触。
振り向くと、ランが缶ジュースを両手に持っている姿があった。
むすっと機嫌の悪そうな顔をした親友は、
「また、あの日のこと気にしてる。いっつも謝ってばっかじゃん」
右手にペットボトルの阿波晩茶、左手には缶ジュースのスダチソーダ。
当ててきたのは茶の方か。
「これ、あたしからのプレゼント」
「ああ、ありがとう」
会釈して左手にあるものを取ると、ランが目を丸くして驚く。
「珍しいね。いつもは添加物がイヤとか炭酸は無糖のやつしか飲みたくないとか言うのに」
「今まで、お前のことを理解したことがなかった。この際だ。ちゃんと向き合ってみるのも悪くないと思ってな」
完全に、気まぐれだった。
今までのように自分しか見ないのではなく。
かざみのように、誰かに寄り添って考えてみたいと思ったがゆえの行動だった。
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