第3章「予想外の猛襲」

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 ビンの中にある薄緑の液体が雲間から少しだけ零れた日光で輝いた。  目を凝らすと、液体の中に破片のようなものが浮いている。  スダチの皮も使用しているようだ。怖すぎる。  そもそもスダチというものは、一般的には焼魚にふりかけるものであって、徳島県出身者であってもスープや素麺にアクセントで入れる程度だ。  それをジュースにする。  僕にとってそれは、胡椒や唐辛子をジュースにするようなものだ。  ありえない。 「あ、このお茶美味しい。最近、テレビやラジオでも紹介してたよね」 「……スダチソーダ。飲むコツはあるか?」 「そんなのないって。それよりさ」  笑うランを横目に、ボトルのキャップを開くと甘やかな匂いがした。  同時にスダチの香りも。 「今日の事、謝らないからね」 「言うと思った」 「だから、美鶴だって昔のことを謝ったりしないで。あんたは自分でやりたい事を思ったようにやった。それで仲間を巻き込んだとしても、別に謝るほどの事じゃないし」  あたしと美鶴の間では暗黙の了解でしょ。  と、口角を上げる親友。  彼女には感謝の気持ちを述べなければと思った。 「やはり僕にとってランは姉か妹みたいなものだ。少なくとも、今の僕にとってお前は良き親友だよ」  けれど、言葉を口にした瞬間、ランはムッとした顔をした。 「男女の友情は成立しない。それは、あんたが一番わかってるはずだよ。例えばあんたは、鳳さんにこっぴどく振られたとしても友達でいようなんて思える?」  瞬間、自分がランに対して物凄く惨いことを言ったような気がした。  掌に包まれた冷たいビンに汗をにじませながら、ランに対して酷く罪悪感を覚える。  対するランは、視線をじっと合わせたまま僕の気持ちを察さんとばかりに探りを入れて、 「とりあえず、鼻をつまんでから一気飲みしてみてよ」   「はぁ!? なんで?」 「飲むコツ、試さないの?」  衝撃的な豆知識を言い放った。  この飲み方、芸人がマズいジュースを片付ける方法じゃないか。
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