第3章「予想外の猛襲」

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 ぬるくなる気配のない清涼飲料水に浮いていた緑色の浮遊物は、気が付くと底面に沈殿している。   「美鶴の男気見てみたい。いっき、いっき、いっき!」 「こいつ……」  明らかに僕をからかう親友にイラつきながら、鼻をつまんでからビンに口を当てる。  次に自分の顎とビンが同時に上を向くように顔面を傾け…… 「むぐっごくっ……ぼふぉっ!!」  スダチにしては甘い。グラニュー糖でも入れているのか?  にもかかわらず、味覚に残った後味は間違いなくスダチそのもの。  独特の酸味が強くいうえに、液体に流動した緑色の破片がいい感じの苦みを与えてくれる。  加糖の炭酸水にスダチを入れたらこういう味になるのか。  缶珈琲と同じサイズなら飲み干せただろうけれどペットボトルとほぼ変わらないビンを空っぽにすることは、無謀だった。  心なしか、むせた瞬間に鼻からも炭酸水が出てきたような気がする。  「あははははは!! ぼふぉって言った! ウケる!」  涙を目に浮かべながら大笑いする女。  人を指さすな。失礼だろう。 「というか、むせるほど不味くないでしょ? フツーに美味しいじゃん」 「僕はいかにも砂糖を入れまくっている感が満載のジュースは飲みたくないんだよ。特に甘い炭酸系はダメだ」  顔を水浸ししながらも、ランと価値観が違うことを認識する。 「珈琲にはいつも砂糖入れてたのにジュースはダメなんだ? 味覚は子供なのに背伸びしちゃって、可愛い」 「珈琲の砂糖は自分の意思で調節して入れているからいいんだよ! そもそも、炭酸水に果汁を混ぜただけの飲料水をここまで甘くするには、どれだけの糖分が必要となるか……」 「出た出た、美鶴の薀蓄(うんちく)。そのクセ直さないとモテないよ?」 「なんだと!?」  隣にいたランを防波堤で押し倒す。  敵もさるもの。仰向けになりつつも、こちらの脇腹をくすぐる攻撃をしかけてきた。  
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