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定休日じゃないときのご飯は、晩御飯というより賄いに近い。
大体がお爺ちゃんの気まぐれメニューだけど、どれも美味しいんだよね。
「かざみ、飯だ」
微かな声が聞こえてきた。
お父さんだ。普段は東京にいるんだけど、しばらくの間はここにいるみたい。
「わかった。今、行くね」
携帯電話を胸ポケットに入れて、食卓の指定席まで歩いていくと、お父さんが指定席でパスタを啜っていた。
お爺ちゃんが見たら怒るだろうなあ。
お父さんの真正面のポジションで着席。
スーツを着てる……普段は小奇麗な私服なのに珍しい。
「かざみ、どうした?」
「あ、ううん。どうして?」
「普段なら私服に着替えているだろう。着替える事を忘れるようなことがあったんじゃないかと思ってな」
鋭い。
お母さん曰く、お父さんは自分への好意以外には敏感だったみたい。
辛い時はすぐにフォローしてくれたけど、告白するまでお母さんの気持ちには気付かなかったんだって。
「親に言えないか……そういう類だな。おれも年を取るわけだ」
「……」
「母さんには少し伝えていて、親父には全然言っていないようだな。賢明な判断だと思う」
お父さんの心を読む攻撃。
私の羞恥心に大ダメージ。
「携帯の振動がした。かざみが家での食事中に携帯を持ち込むのは珍しいな。常に連絡を気にしているのか。相手は交際している相手……あるいは年長者。加治木か?」
「違うよ。八時に先輩と会う約束をしてるんだ」
いつも思うけど本当に鋭い人だなあと思う。
そうじゃなかったら、秋葉原で経営なんてできないんだろうけど。
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