第4章「繋がり」

12/24
前へ
/168ページ
次へ
 閑話休題。  美弥子と話し込んだ所為でスルーしていたのだけれど、ランは今頃どうしているだろうか?  とりあえず、通信アプリにて確認してみる。 『ラン、ごはんですよ』  台詞を投下した瞬間に表示される『既読』の文字。  いわゆる既読スルーである。  僕を無視するとはいい度胸をしているじゃないか。  ならば、こちらも攻めの手を止めずに行こう。  強く決意し、怒涛の豆知識を液晶画面に叩きつける。 『さて、ごはんですよといえば海苔だな。徳島県には大野海苔という有名な海苔屋が存在していることは知っているだろうか? 僕はあの味付け海苔をあまり好きではないのだけれど、海苔業界でいえばあそこの会社は良品質の製品を作り出しているそうだ』 『ちなみに海苔を外国人に推奨することは良くない。外国人の多くは海苔やワカメといった海藻類を消化できるような臓器の仕組みになっていないらしい。日本人にとって無くてはならないワカメだけれど、外国では侵略的外来種として相当な猛威をふるっているそうだ。僕としては外国でワカメを掃除する企業を立ち上げて、そこで得たワカメを安値で日本に叩き売ればいいんじゃないかと思うわけなのだけれど、ランの意見はどうだろう?』 『そういえば、釣りを嗜んでいる連中からシーバスと呼ばれているスズキもまた侵略的外来種なんだそうだ。実際に釣りをしたらわかるのだけれど、あのブラックバスにソックリな外見は、食欲を失せさせる。あの畜生みたいなドブ臭い魚を食べた奴は、あれに似たフォルムの魚を口に入れれないだろうな』 『そうそう。魚料理をする基本において』  脳内で整頓した文章を羅列している最中、ドタドタと鬼気迫る足音がした。  そして、 「うっさい!!!!」  猛犬のように唸る親友がジャージ姿で飛び出してきた。  私生活感の溢れるフォルムのなかに、どこか女らしい体躯だと思わせる色気がある。  そして、海岸通りでもみくちゃになった時と同様に、襲撃すると見せかけて胸を潰れるほどに押し付ける姿勢は中々に涙ぐましい。  あのプライドと見栄の塊だったランが、自尊心を捨てた破れかぶれの色仕掛け特攻をするようになったのか。  キャンキャン吠える親友も、一皮剥けて成長しているんだな。  僕も頑張らなくては。  
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加