サイレントスクリーム

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 ずっと身近にあって、あたりまえに流れていく風景と光。自然に多くの神々が住むと信じられ、天体と、神々と、人が共に生きるこの島に私は暮らしている。  穴の開いたみすぼらしい土の壁の家。ヤモリがいつも張りついている。それが私の家だ。        むき出しの電球。土の床。ヤシの実の殻で煮炊きをし、水は川から汲んでくる。冷蔵庫もコンロも洗濯機もない。        近所の裕福な家の庭にテレビが置かれていて、村の者たちが集まってそれをみせてもらう。        私の島の暮らしがほかの土地や国よりもずい分遅れていることを、私はそのテレビを観ることで知った。同じインドネシアの中にさえ、地域によって歴然とした発展の差がある。        テレビに映る人々の暮らしは、まるで伽の中の国のよう。        穴の開いていない頑丈な白い壁。美しい洋服で着飾った人たち。洒落たインテリア。豪華な絨毯やカーテン。電子レンジで食事を温め、食器は機械が洗ってくれる。        でも、生まれた時からここにいる者たちにとって、それらがないことは不自由ではない。  他の土地の豊かさは別次元の静止した絵だ。      
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