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  《おまけのショートストーリー》 「おかえりなさい」 「ただいま」 ドアを開けてくれた陽向にハグをしようとして、異変に気が付いた。 なんだか瞼が腫れてないか?改めて顔を覗き込むと、心なしか鼻も赤い。 「陽向、泣いた?」 途端に大きな瞳がウルウルし始める。どうしたんだ!? 「うう……死んじゃったんだ」 ハッとした。 「まさかメルが!?」 メルは陽向が可愛がっているウサギだ。 「違う……良一さんが……うぅ」 「……誰、それ」 リビングに入って、ようやく合点がいった。 普段あまりテレビドラマなんか観ないのに最近録画の予約がされていて珍しいなと思っていたが、昼間に一人で見ているらしく詳しい内容は知らなかった。だが、一時停止されている画面を見て納得がいった。 以前から陽向が俺と似ているという俳優が出ていたのだ。どうやらその俳優の役どころが良一らしい。 「良一さんは征治さんとは全然違うんだよ?人柄はとってもいいけど、仕事はあんまり有能って感じじゃないし、ちょっと天然さんだし。はっきり言ってルックスだって征治さんの方がずっとカッコいいし。だけど、死んじゃったら……他人事とは思えなくて……うえーん、征治さんが癌になったら嫌だぁ」 色々ツッコミどころが満載だが、陽向の泣きべそ顔が可愛すぎて思わず抱き締めてしまった。 「大丈夫だよ、毎年会社の健康診断も受けてるし」 「うん……だけど、最近凄く仕事忙しいでしょ。不調があっても征治さん、我慢しちゃいそう。何しろ、栄養失調でぶっ倒れた前科があるし」 「もう俺一人の体じゃないから、無理しないよ。陽向こそ、俺みたいに定期的な健診がないから心配だな。酒が弱くて真っ赤になる人はある種の癌になりやすいっていうし……よし、陽向もこれから毎年人間ドックを受けよう」 「へ?」 「いいね?」 「う、うん」
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