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「いや、俺だってシノブに助けられたんだ。お前があの家に来なければ遅かれ早かれ俺は壊れてたと思う。実際その兆しはあったしな。 シノブがあの家に来て、色々弱ってるお前の面倒を見ることで俺も自分を立て直せた。お前が兄貴のように俺を頼りにして純粋に慕ってくれるのが嬉しくて、俺の歪になりかけてた心が補正された。俺はシノブに救われたんだよ」 レイがそんな風に感じていたなんて、僕は全く気付いていなかった。僕はただただレイの親切に甘えていただけの様な気がする。 「それにしても、ほんとに連絡がついてよかったよ。俺もあの群馬の工場の名前がうろ覚えでさ、最初は色々ネットで検索掛ければ見つかるかな、見つかったらまず手紙でも出してとか考えてたんだ。だけど会社が潰れてるとはなぁ。考えてみればあれから随分経ってるんだよな。 だけど、足を運んでみて良かった。こうやってシノブに会えたんだからな。お前がちゃんと無事で、元気そうな姿を見られて、俺も嬉しい。おまけに口まできけるようになってるっていうサプライズ付きだ」 そう言ってレイはまた人懐っこい笑顔を見せた。 ちょうど料理も運ばれてきて、そこからはお互いの脱走後の話や近況報告をしあった。 征治さんが外で心配していると悪いので、レイに断って 『本当にいい話だった。  安心して』 とメッセージを送っておいた。 レイも定時制高校中退という学歴だったし、居所を知られる怖さから頼れる身寄りもなく、最初はかなり苦労をしたようだった。 「だけど、今は幸せだよ。ちゃんと定職にも就けたし、学歴無くても狭い古アパートに住んでても、俺を受け入れて傍にいてくれる奴がいるからな。ああ、今すぐにでも結婚してやりたい。子供もいっぱい作ってあったかい家庭を作りたい」 そんな風にデレながら、スマホの中の彼女の写真を色々見せてくれる。 レイは僕の無事を確認し、沢井のことを報告するという大きな荷物を降ろして、また楽になれたのかもしれない。 仲良さげなツーショットの数々とそれを見せてくれる屈託のないレイの笑顔を見て、我がことのように嬉しくなった。 「シノブはちゃんと心を許し合える相手はいるか?自分の生い立ちや過去を誰にも話せないって、辛いよな」
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