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「だって、特別な日でしょ?」
「・・・僕が自由になれた日だから?」
「それもある」
「他には何があるの?」
僕を見下ろす征治さんが少しはにかみながら笑う。
「凄く・・・嬉しかったんだ。陽向が初めて誰かに俺のことを『恋人だ』って紹介してくれたから」
征治さんも翔太もそれぞれに僕のことを心配してくれるから、言葉で説明しなくても二人を会わせれば人となりでお互いに安心して貰えると思っての行動だった。
僕にとって征治さんは最愛の人で恋人なのは当然なのだけれど、それを対外的に示すことがこんなに征治さんを喜ばせるとは。
「ねえ、『俺と会えて生きててよかった、幸せだと思えた』って言ったのは本心?それとも翔太を安心させるため?」
そんなの、わかってるくせに。
「違うよ・・・本当に今、幸せ過ぎて・・・タイムマシーンがあったら、死にたいって思っていた過去の自分に『もう少し頑張れ、そうすればまた征治さんに会えて、夢みたいに幸せな日が来るから』って言いに行く。
あ、でもそんなことしたら未来が変わっちゃう?征治さんに再会出来ない未来になったりしたら絶対に嫌だ・・・僕には征治さんしかいないん・・・んんっ」
最後の台詞は征治さんに飲み込まれた。
強く抱き込まれ、苦しくなるほどのキスの後、征治さんが囁いた。
「陽向・・・俺も陽向がいない世界なんて、もう想像できない」
少し切なげに揺れた瞳に愛しさが溢れだす。自分から征治さんの顔を引き寄せ、口づけた。
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