遠足

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昨日は学校の遠足だった。バスに乗って少し遠い場所にある、絶叫系で有名な乗り物のある遊園地に行くはずだった。 それなのに、私は朝になり38度の熱を出し、楽しみにしていた遠足を休まざるをえなかった。 それでも今日は皆に会いたくて学校へ行こうとすると、母は「今日はお休みよ。」と言う。 熱も下がったし、何より自分一人仲間外れにされるのではないかと、変な不安で私は母の見てない隙に家を抜け出し学校へと向かった。 6年1組の扉を控えめに開けると、皆が此方を向いて笑顔で迎えてくれた。 「おはよ、早紀ちゃん。」「もう大丈夫なの?」「あ、お土産あるんだよ。」 教室はいつも通りの賑やかさで、私は安心して友達の元へ向かう。 「いーなあ。皆、楽しかった?」 「うん、でも早紀ちゃん居なくて寂しかったよ。」 「ねー、早紀ちゃんも来ればいいのに。」 「あ、それいい!早紀ちゃんも行こうよ。」 「えっ?行くってどこへ?」 「だって、早紀ちゃん寂しくなると思うよ。」 仲の良い茜ちゃんが私の腕を引っ張り廊下へ連れていこうとする。 「いこう、いこう。」 萌絵ちゃんも嬉しそうに私の背中を押す。 「そうだね。早紀ちゃんもいこう。」「いいね、前田も連れていこう。」 男子達までが、同じ言葉を繰り返す。 「いこう、いこう、いこう、いこう、いこう、いこう。」 私はされるがまま廊下へ引っ張られていく。 廊下へ後一歩の所で、誰かが叫んだ。 「前田さん!何やってるの、やめて!!!」 振り返ると隣のクラスの先生で、私は教室の窓から飛び降りようと、片足を窓の手摺にかけている様な状態だった。 「えっ?」 急いで、足を戻して見回すも、さっきまで賑やかだった教室には誰一人居なかった。 先生が言うには、昨日遠足の帰りに急な大雨で土砂崩れが起きて、6年1組の乗ったバスは崖下に転落し全員死亡したのだという。 熱で寝ていた私は全くその事を知らなかったし、母は私がショックを受けるだろうと、敢えて言わずに「今日は休み」とだけ言ってくれたのだ。 その後直ぐに母が迎えに来てくれて、家へと帰ったのだが・・・・。 いこう、と言うのは「逝こう」だったのではないか。 クラスメイトの恐ろしく冷たい笑みが、脳裏に焼き付き離れずにいる。 「逝こう、逝こう、逝こう、逝こう、逝こう、逝こう・・・・・」
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