貸しボート

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貸しボート

 友達数人と観光名所になっている湖に旅行に行ったのだが、そこに貸しボートが置かれていた。  ちょうど偶数人だったので、二人ずつ乗ろうということになったのだが、あてがわれたボートを見た時、私は自分の目を疑った。  ボートの底がない。  どう見直しても舟形の木枠だけか浮いている状態で、湖の底が透けて見えている。  なのに店主はさあどうぞと、私と友達にボートを勧めてくる。  何の冗談だろうと、隣にいる子を窺ったが、ペアを組んだ友達は当たり前のようにボートに乗り込もうとするのだ。  慌てて止めたが、友達や店主の様子を見ていて私はとあることに気がついた。  どうやらボートが底抜けに見えているのは私だけらしい。  理由は判らないけれど、私にはボートの底がどうしても見えない。だから乗り込む気になどまるでなれず、手を捻ったらしくてオールが漕げないと嘘をつき、足でペダルを漕ぐタイプのボートに変更してもらうことにした。  友達も、そういうことなら仕方ないねと納得してくれて、私達は足漕ぎタイプのボートに乗った。ちなみにそちらの船底はきちんと存在していた。
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