彷徨う卵

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体の方も徐々に回復したが、俺はもう現場では働けない体になったため、また本社の古巣へと帰れることになった。 ああ、本当に助かったのだ。 俺は、あの女に感謝しなくてはならない。 そして、あの爺さんにも。 あとでわかったことだが、あの爺さん、どうも見覚えのある顔だと思っていたら、俺のじいちゃんの家に飾ってある、曾じいちゃんの顔だった。ご先祖様が俺を守ってくれたのだ。 目が覚めた時には、あの卵は無くなっていた。 そう思っていた。 俺が退院して、久しぶりに実家に帰ると、その卵はテーブルの上にあった。 卵なんて、どれでも同じだと思うが、俺にはわかった。 あの卵は、あの女が渡してきた卵だ。 俺は、そっとその卵を手に取る。 その様子を、襖の陰から、コンビニの顔色の悪い店員と、古本屋の爺さん、喫茶店のおばちゃんがニヤニヤと笑いながら見ていた。
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