彷徨う卵

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彷徨う卵

どのあたりから、記憶が無いんだろう。 気がつけば、俺は、小さな路地裏を歩いていた。 この町に越して来て1年になる。 会社での俺の居場所は無くなっていて、言えばこれは左遷というやつである。 この小さな田舎町に左遷になった時には、それなりに自尊心が傷ついたし、無能のレッテルを貼られ、今までとはまるで違う内容の作業をする本社の下請工場に出向という形で出されたのだ。 今までは、本社で総務職に従事していたが、度重なるミスで、向いてないとみなされたのだろう。 しかし、いざ従事してみれば、単純作業でやり甲斐はあまり感じないが、気分的には楽になった。 本来であれば、本社は、俺が自主退職することを望んだのだろうが、意外と居心地が良くなったのだ。 転職なんてしても、どうせいつまで経っても良い仕事が見つからずに、フリーターになるのがオチだ。 それからというもの、俺の生活は、工場と自宅を行き来するだけの生活。 親しい友人も無く、趣味もない。 同じ道を通って、会社に通い、帰って眠るだけ。 面白みも無いが、ストレスもなかった。 気分転換に、いつもと違う道を通ってみようなどと思ったのが間違いだった。     
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