1章-1 同窓会と忘れられた君

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 僕ははっとして目を開く。  身体を起こし夢だとわかると、安堵の様な、はたまた残念とも言う様に息を吐いた。  "奈良崎千早"  夢に出てきた少女の名で、中学校の同級生。会わなくなって5年しか経っていないのに、もう懐かしさを感じてしまう。それが普通なのだろうか。  夢の中で、僕―今井壮太―はその奈良崎とキスしていた。  過去にそういったことがあった訳では無い。ましてそんな関係になれるわけなんて―  僕は当時彼女に片想いをしていた。でも、その思いを伝えることは出来ないまま卒業してしまい、今では会うことは疎か連絡もとっていない。そもそも連絡先すら知らなかった。  進学して部活のこととかで忙しくなると、彼女のことは自然に考えることはなくなっていった。人とは不思議なもので、どれだけ好きだった人の事も、簡単に記憶の隅に追いやることが出来てしまうらしい。  そんなこんなで彼女の事は、今日(こんにち)まで"忘れて"しまっていた。
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